教科融合型教材の開発と
     カリキュラム・デザイン

教科融合型教材の開発とカリキュラム・デザイン

 オンライン教材研究会 監修
 笹野恵理子 編著
  


 A5判 130ページ 並製
 定価 2000円+税

ISBN978-4-921102-54-8 C3037

[発行所:NSK出版 発行者;新藤智]

 

 

目  次

教材 絵本《ピーターとオオカミ》 ( オンライン教材研究会監修 )
 はじめに 
1部 理論編:教科の垣根を超える学びの意義
 第1章 教科融合・教科横断・教科連携と道徳教育
  ― 特に、シュタイナー学校のエポック授業を手がかりとして ― 〈吉田武男〉
 第2章 教科融合カリキュラム類型と教科を「超える《学習の意義
  ― R.フォガティの 所論から ― 笹野恵理子 ・佐藤真由子

2部 実践編:〈ピーターと狼〉を主題にした学びの展開事例
 第3章 民話の語り手になろう*パワーポイントで紙芝居づくり
 〈総合的な学習 磯田三津子〉
 第4章 オノマトペを活用した音と言葉を結びつけた小学校高学年の学習事例
 〈音楽・国語幼小連携 樫下達也・多賀秀紀〉
 第5章 「メロディーを色と形であらわそう《小学校高学年の学習事例
 〈図画工作・音楽・読み聞かせ 吉田奈穂子〉
 第6章 外国語科のモ ジュール学習:小学校高学年の学習事例
 〈外国語科 ・ オン ライ絵本読み聞かせ ・朗読劇 金 琄淑〉
 第7章 6年生のブックトーク「希望~明るい未来・中学生に向けて《
 〈国語(ブックトーク,読み聞かせ)・外国語活動(英語) 松本晶代〉
 第8章 「お話を絵・動き・音で表現しよう《特別支援教育の学習事例
 〈音楽(音楽づくり・身体表現,鑑賞),図画工作 菅 道子・上野智子・山﨑由可里〉


 本書は,私たちが開発した教材を有効活用していただくためのガイドブック ですが,私たちが最初の試みとしてとりあげた素材は,ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフが制作した《ピーターと狼》という音楽物語です。この物語は,さまざまな学習展開の可能性をもち,現在も世界中の子どもたちに学ばれ,親しまれているスタンダード教材です。音楽物語である点は,「教科《を超えた学びを創造し,また生活に根差した芸術活動や表現活動を重視した学びを構想したいと考えている私たちの願いにぴったりな素材だったといえるでしょう。
 「理論編《は,なぜ「教科《の垣根を超える必要があるのか,なぜ「教科融合《「教科横断《「教科連携《型の学びが必要で大切なのかを論じました。そして「実践編《では,具体的な実践事例を展開しました。《ピーターと狼》といったひとつの共通素材をもとに,多様な教科で多角的に活用できる事例を模索し,「教科先にありき《という発想からいったん離れ,子どもの「経験《を主体にした学習のデザインの可能性を拓こうとしています。各事例の冒頭には,教科融合(横断・統合・連携)のポイントを記しましたので,開発教材を活用いただくときの参考にしていただければ幸いです。
 もともと「教科《は,ア・プリオリにあったものでなく,大人が子どもになりかわって「文化《から「学びの内容《を選択し,子どもに提示しやすいよう後にカテゴライズしたものです。私たちは,ともすると「教科中心主義《になりがちであった 従来の教育において,「教科《の周辺にあって見えにくかったもの,「教科《と「教科《の 隙間 にあって 漏れ落ちてしまっている かもしれないもの,そん なところにこそ豊かな学びの可能性が潜んでいるのではないかと考えました。子どもの認識を考えると,特に生活に根差した「文化《を教育内容とする教科や領 域は,「教科《に無理やりおしこんで学習しているようにもみえます。子どもの生活経験に根差し,「教科《と「教科《をつなぐ,「教科《と「教科《の隙間を埋める,「教科《から「はみだしたもの《に目を向ける発想から,私たちは教材開発のキーワードを「文化理解《としています 。最近小学校に導入された「外国語活動《は,まさに「知識・理解《を超えて,「文化理解《を軸とした〈新しい能力〉を求める「教科《ともいえます。
 本書は,「小学校外国語活動・外国語《「音楽《「図画工作《「総合的 な学習《の教科・領域で,教科の連携 を視野にいれた教材化を試みています。
 冒頭の絵本は,吉田奈穂子氏が制作統括し,ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)が創設したドイツの私立学校の水彩画(にじみ絵)の描画技法を使用したものです。吉田氏によると,プロコフィエフの孫は,14歳の時にシュタイナーの著書に出会い,人智学が禁止されていたソヴィエト下で研究・実践を行った人物だったそうです。 水で湿らせた紙の上に,黄色と赤色と青色の3色の絵の具のみを使用して描くこの技法は,線で形を描かず,色と色との境目に形を見るものですが,まさに「教科《の「境界《の限界に挑もうとする私たちのプロジェクトにぴったりな画法といえます。目や口などの表情を描かず,読者の想像にゆだねる絵本からは,現代に生きる人間としてのピーターが子どもたちの豊かな想像力の中から生まれてくることでしょう。読む人とのかかわりの中から,果てしない可能性をもった物語として『ピーターとオオカミ』を楽しんでいただければうれしく思います。
 同時に,インクルーシブ教育の観点から,特別支援学校において使用可能な教材開発を試みたのも特徴です。同一のコンテンツをもとに多角的な教材の可能性を追求することで多様な背景をもつ子どもたちが学びあう機会と場を保障することにつながると考えました。

 本書は令和3年度日本教育公務員弘済会本部奨励金の助成を受けて遂行されたプロジェクトの成果を基にして刊行したものです。
(笹野恵理子)


 私たちが開発した教材は詳しくは以下のサイトで公開しています。
サイト吊「ピーターと狼《

https://sites.google.com/view/peterandthewolfcurriculumguide/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0


オンライン教材研究会 メンバー 2023 年 2 月時点)

研究代表 笹野恵理子(立命館大学)
共同研究者
磯田三津子(埼玉大学 上野智子(和歌山大学) 樫下達也(京 都教育大学) 菅道子(和歌山大学) 金 琄 淑(聖徳大学) 佐藤真由子(立命 館大学) 多賀秀紀(富山大学) 松本 晶代 つくば市学校図書館司書教諭補助 員 山﨑由可里(和歌山大学) 吉田奈穂子( 筑波大学) 総合アドバイザー 吉田武男(貞静学園短期大学学長)




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