改訂 道徳教育とその指導法

改訂 道徳教育とその指導法

 

 筑波大学


  吉田 武男  編著


A5判 120ページ 並製
定価 1200円+税

ISBN4-921102-08-2 C3037

目  次

はしがき

第1章 道徳と道徳教育

  第1節 現代社会と道徳 1.現代社会の特質と道徳  2.道徳教育の必要性
  第2節 道徳の本質と課題 1.道徳の意味     2.道徳と宗教
3.道徳と芸術     4.道徳と科学
5.道徳と情報     6.道徳的価値
7.道徳性

第2章 道徳教育の諸相

   第1節 道徳教育の変遷 1.明治期の道徳教育  2.大正・昭和初期の道徳教育
3.戦後の道徳教育
  第2節 諸外国の道徳教育 1.イギリス   2.ドイツ  3.フランス  4.アメリカ

第3章 道徳教育の諸理論

 第1節 諸外国の諸理論 1.デュルケム   2.ピアジェ
3.ラス,ハーミン,サイモン
4.コールバーグ  5.シュタイナー
 第2節 わが国の諸理論 1.価値の明確化   2.モラル・ジレンマ授業
3.構造化方式   4.統合的プログラム
5.総合単元的な道徳教育

第4章 学校教育における道徳教育

 第1節 学校教育全体における道徳教育 1.基本方針   2.道徳教育の目標と内容
3.道徳教育の運営と評価
 第2節 道徳の時間における指導法1.指導の基本方針   2.学習指導案の作成
3.学習指導案作成の手順    4.学習指導の展開
 第3節 ユニークな道徳教育の実践1.人権教育を取り入れた実践  2.詩を活用した実践 
3.地域や家庭との連携を生かした実践

〈資料〉

(1) 教育勅語  (2) 教育基本法  (3) 学校教育法施行規則
(4) 学習指導要領(平成10年版) (5) 期待される人間像
(6) 中央教育審議会答申 (7) 教育課程審議会答申
(8) 教育改革国民教育会議報告 (9)『心のノート』

はしがき
 「いじめ」や「不登校」や「学級崩壊」などの教育的病理現象を表現する用語が,専門家やマスコミによって次々と生み出されている。残念ながら,これからも,その種の用語が創り出されることであろう。それぐらい,学校やそれを取り巻く社会の現実は,好転や現状維持どころか,ますます混迷の度を深めているのである。
 そのような状況下にあって,心の専門家と称するカウンセラーにゆだねれば,あらゆる教育的病理現象は完全に解決されるのではないかという,とんでもない過剰期待が現実に広まっている。学校においても,似たような雰囲気が醸し出されている。そこでは,「指導」よりも,「支援」や「援助」や「ケア」などの用語が金科玉条のごとく肯定され,その人の「心の持ち方」,特に感情の変化による解決が方法として注目されている。確かに,そのような対策的療法ないしはクライシス的なカウンセリングは,ある種の人間や状況において,学校の生徒指導の方策として有用であろう。
 しかし,そのような方法によってだけでは,その子どもの置かれた日常生活の状況全体を根本的に解決するとともに,未来に向けて「イキイキ,ワクワク」生きていけるような希望や夢を子どもに与えることも不可能である。まさに,そのような状況下では,学校は,単なるサナトリウムや適応指導教室になってしまうだけであろう。
 それでは,現代の学校において,人間形成の一つの機関としてどのような役割が期待されているのであろうか。言い古された表現であるが,簡潔に言えば,知・情・意の育成,ないしは知・徳・体の育成がその役割である。昨今の表現を使うならば,それは「生きる力」の育成である。いわば全人的な教育が求められているのである。その際に,道徳教育は重要な位置を占めることになるであろう。
 そのような考え方に基づいて,本書は,主にその道徳教育の部分を取り上げ,その基礎的な知識に最新の知見を織り交ぜながら整理したものである。特に,その際に,本書の特徴としては,次の二点を意識的に強調しようとした。一つは,還元主義的な発想よりも,ホリスティック的な発想,つまり人間の全体性や「つながり」・「かかわり」の尊重である。いま一つは,先にも少し触れたように,現在の社会的な風潮として肯定的に受け取られている「支援」や「援助」や「ケア」よりも,最近どうも疎かにしているとしか思えない教育の原点としての「指導」,そしてそれを支える心的な「責任感」の重要性である。
 第1章では,「人間とは何か」ということを念頭に置きながら,道徳教育の必要性や意義,さらには道徳の本質が取り上げられている。第2章では,わが国の道徳教育の変遷や諸外国の道徳教育の有り様を概観しながら,道徳教育の諸相が整理されている。第3章では,代表的な諸外国の道徳教育の理論とともに,わが国の教育現場でよく知られている道徳教育の理論が示されている。第4章では,わが国の学校教育における道徳教育の基本的な方針とユニークな実践が取り上げられている。
 もとより,執筆者は道徳教育の研究者としてはまだまだ力量不足であり,また準備時間も必ずしも充分ではなかったために,用語の不統一など,本書のできばえについても至らぬ点が多いと思われる。しかし,ここでいろいろと弁明したところではじまらないので,本書をテキストとして使用される先生方および読者の批評・批判をお願いし,次の機会によりいっそうの改善を図りたいと考えている。


編著者プロフィール

吉田 武男

(よしだ たけお)
 1954年奈良県生まれ。奈良市の小学校教員から筑波大学大学院に進学。
同大学院博士課程教育学研究科(教育学専攻)単位取得退学。
関西外国語大学,高知大学教育学部を経て,現在,筑波大学助教授(教育学系)。
専門は,道徳教育学,教育方法学。
主要著書に,『シュタイナー教育を学びたい人のために―シュタイナー教育研究入門―』,
『シュタイナー教育名言100選』などがある。

お求めは《注文画面》


もどる